メンタル・ヘルス研究所日本生産性本部

過重労働・メンタルヘルス対策の在り方に係る検討会報告書(抜粋)

厚生労働省 平成16年8月18日発表

3 基本的考え方

(1)対策の方向
○ 過重労働による健康障害防止対策については、平成14年2月の「過重労働による健康障害防止のための総合対策」に示されている事業者が講ずべき措置(@時間外労働の削減、A年次有給休暇の取得促進、B労働者の健康管理に係る措置の徹底)を確実に実施すること、特に、適正な労働時間管理と健康診断を軸とした健康管理を進めることが基本であるが、やむを得ず長時間労働になり、疲労の蓄積が生じたと考えられる場合にはそれに応じた健康確保のための措置を講ずる必要がある。

○ メンタルヘルス対策については、平成12年8月の「事業場における労働者の心の健康づくりのための指針」に示された、@セルフケア、Aラインによるケア、B事業場内産業保健スタッフ等によるケア、C事業場外資源によるケアの4つのケアにより心の健康づくりを進めることが基本であるが、自殺予防の観点からも、職場のストレスにより労働者がうつ状態になったような場合に早期に対応できるようにする必要がある。このほか、家族によるケアも重視する必要がある。

○ また、これらの過重労働による健康障害、メンタルヘルスの不調は、職業性因子のみに由来する職業病とは異なり、一般人にもみられる多原因性の疾病で、@その発病原因の一つに職業性因子のあるもの、A職業性因子が原因にはならないが、憎悪・促進の原因となるもの、といったいわゆる「作業関連疾患」に分類されている。これらは業務上の要因のほか個人の要因がその発症に影響するものであることから、一律の対策がとりにくい面があり、個々の事情に配慮して対応する必要がある。また、労働時間管理、人事配置等人事労務管理とも密接に関連する面もあり、労使一体となった自主的な取組が求められるものである。

(2)事業者の責務
○ 過労死等について事業者の安全配慮義務違反が認められた裁判例に見られるように、事業者には労働者の労働時間管理や健康状況を把握し、それに応じた適切な措置を講ずる責務がある。事業者は、対策に取り組む意志を表明し、確実に実行していく必要がある。

○ 具体的には、事業者は、健康管理に係る体制を整備するとともに、健康診断結果、産業医による職場巡視、時間外労働時間の状況等様々な情報から労働者の心身の健康状況及び職場の状況を把握するよう努め、労働者の健康状況に配慮して、職場環境の改善、積極的な健康づくり、労働時間管理を含む適切な作業管理等様々な措置を実施することが求められる。

○ このような措置を通じて職場の負荷要因・ストレス要因の低減等を図ることにより、過重労働による健康障害等の防止はもちろん、心と身体の健康の保持増進、快適でいきいきとした職場づくりが進むこととなる。また、このことにより、労働者の労働意欲が高まるといったメリットも期待できる。

(3)労使による自主的な取組
○ 過重労働による健康障害防止対策、メンタルヘルス対策については、国が一定の基準を示し、それに沿った措置を実施することはもとより、事業者が労働者の意見を汲みつつ事業場の実態に即した取組を行うことが必要である。特に、労使、産業医、衛生管理者等で構成される衛生委員会等を活用した労使の自主的取組が重要である。

(4)労働者自身による取組
○ 過重労働による健康障害、メンタルヘルスの不調は、業務上の要因のほか個人の要因がその発症に影響するものであり、その対策として、事業者が適切な措置を講じるばかりでなく、労働者自身が積極的に自己の健康管理を行うことも大切であり、労働者自身の自主的努力、取組を促進することも重要である。

(5)産業保健活動の充実
○ 過重労働による健康障害防止対策、メンタルヘルス対策については、医学的知識を基礎とした健康管理が対策の軸となるものであり、産業医等の医師の積極的な関与が重要である。このため、産業医に対する研修をはじめ産業保健スタッフの研修等により産業保健活動の充実を図ることが必要である。特にメンタルヘルス対策については、その専門性にかんがみ、産業保健を理解した精神科医等の育成、産業保健スタッフと精神科医等との協力及び連携を図る必要がある。

○ また、長時間労働や職場におけるストレスは、業種や事業場規模に関係なく全ての事業場に共通する問題であり、全ての事業場において必要な対策を講ずることが求められる。このため、事業場に対する支援、特に、小規模事業場への産業保健サービスの提供の充実が望まれる。

(6)健康情報の保護
○ 平成15年5月に、個人情報の有用性に配慮しつつ、個人の権利利益を保護することを目的とする個人情報の保護に関する法律が成立しており、個人情報の中でも健康情報は、特別に機微な情報として慎重に取り扱われるべきものである。事業場において健康確保対策を実施する場合、健康診断結果、医師による面接の結果等個人の健康情報の保護について十分な配慮が必要である。特に、メンタルヘルス対策においては労働者が安心して事業者が講ずる措置に参加できるために、すなわち事業場のメンタルヘルス対策がより実効あるものとなるために、労働者の健康情報の保護及び労働者の意思の尊重に留意することが重要である。