メンタル・ヘルス研究所日本生産性本部

メンタルヘルスQ&A

質問

同期入社のYは、度を越すほどまじめで融通の利かないカタブツで、人のいやがる仕事を次々引き受けて連日残業していました。普段はおとなしいタイプですが、サシで飲むと陽気に酔って、会社の悪口を言い合ってうっぷんを晴らしていました。決して手を抜かない誠実な対応ぶりが評価され、上司からの信頼も厚く、半年前にチームリーダーに抜擢されたばかりでした。
先日、久々に会って、やつれた様子に驚きました。無理に飲みに誘ったものの、食が全く進まない様子で、酒ばかり飲んでいました。チームがうまくまとまらず、仕事がはかどらず、それを自分のせいだといいます。考えすぎだといっても、全然納得せず、課長にも同じことを言われたと言っていました。
昨日、社内の喫煙室で会ったとき、近所のメンタルクリニックで「うつ病」といわれたと、Yがぼそっと言ったので驚きました。奥さんに強引に連れて行かれたのだとか。食欲がなく、よく眠れず、明け方にぼーっと布団の上に座っている日が続いていたといいます。Yがうつ病だなんて信じられませんでした。たしかに最近の様子は変でしたが。「そんなこといわずに頑張れよ」といいそうになってはっとしたのです。うつ病って励ましてはだめなんだっけ。こんなときYにはどう言えばいいのでしょうか。

回答(独立行政法人労働安全衛生総合研究所 産業医学総合研究所 精神科医 倉林るみい)

うつ病の人に対して「頑張れ」などと励ましてはいけないというのは、よく知られています。うつ病の人は精一杯頑張っているのです。周囲から頑張れといわれると、その期待に応えようと、さらに頑張ろうとします。けれど、心身の調子を崩して歯車がかみ合わなくなっているので、頑張っても空回りするだけで本来の実力が発揮できないのです。本人は周りの期待に添えない自分の不甲斐なさに、さらに落ち込んでしまうのです。うつ病の人に頑張れというのは、マラソンを走りきって疲弊して倒れ込んでいる人に、今すぐもう一度走れというようなものなのです。
では、どう声をかけたらよいのでしょうか。実は、うつ病の人を励ましてはいけないのではないのです。励まし方が問題なのです。先のマラソン選手を念頭に置いてみましょう。「お疲れさま。今はゆっくり休んで英気を養い、次の大会でまた頑張ってくれ」と励ませばよいのです。すなわち@これまでの頑張りをねぎらう。上司の立場なら、併せて本人の会社への貢献を評価し、貴重な人材であることを伝えるAいずれ元気を取り戻した後に、仕事に邁進してほしいと励ます B今は、そのための充電期間と考えてゆっくり休養をとり、治療に専念してほしいと伝えるのです。今のつらい時期が希望ある将来につながっていることを強調するようにします。
実は、Yを無理に飲みに誘ったのは、お勧めできません。人一倍気を遣ううつ病の人は、気晴らしによかれというこちらの好意を察して、気が進まなくても誘いを断れないものなのです。これでは本人の気分転換にはなりません。そこでこんな声かけはいかがでしょうか。「少しゆっくりして、元気になったらまた一杯やろうや。お前とうまい酒を飲むのが、俺の唯一の楽しみなんだから」。