メンタル・ヘルス研究所日本生産性本部

メンタルヘルスQ&A

質問

 他社との合併が決まりました。わが社としても生き残りのためにやむなしという合併のようで、周囲にも歓迎ムードはなく、みんなピリピリしています。総務担当の自分も急に仕事が増えて、帰宅がめっきり遅くなりました。今後どうなるのかも心配で、夜もあまり眠れません。そのせいか、最近仕事の能率も上がらず、先日もケアレスミスを連発してしまい、上司もおかんむりです。半年後の合併に向けて必要な処理が山ほどあるのに、全く進みません。何より、仕事が全然おもしろくなく、手につきません。帰宅しても疲れているせいか、以前好きだった音楽を聴く気にもなれないのです。身体が資本だからと食事は無理にも食べてはいますが、美味しくはありません。親しい同僚が心配してくれて、最近めっきり痩せてきたから医者に行ってみたらといわれました。友人からも同様に勧められ、仕方なく近所の内科に行きました。血液などの検査の後、身体には問題ない、うつ病かもしれないとのこと、最近はよい薬もあるから専門の先生によく相談しなさいと心療内科を紹介されました。自分がうつ病? 百歩ゆずって仮にうつ病になりかけているにしても、こころの問題にどうして薬なんかが効くのか、薬をのめだなんて、自分が弱い奴といわれている気がします。薬に頼りたくないのですが、どうすれば良いでしょうか?

回答(独立行政法人産業医学総合研究所 精神科医 倉林るみい)

 合併が会社全体の問題であっても、それによるストレスの影響は、その人の立場や性格によっても大きく異なります。一般に、責任ある立場の人やまじめな人はストレスを感じやすいものです。したがって、同じ部署でも、強いストレスを感じる人感じない人、心身の不調が強く出る人出ない人がいても、少しも不思議はありません。
  また、こころの問題だから気力でなんとかせねばと頑張ってしまう人も少なくありません。しかし気合いで何とかなる範囲はごく軽い場合に限られます。うつ病が疑われるということは、歯車でいえばかみ合わなくなっているくらい心身が調子を崩した状態です。気力を振り絞っても歯車がいたずらに空回りするだけで、心身ともますます消耗するばかりです。きちんとした治療によって、歯車のかみ合わせを元に戻すことが必要です。その2つの柱が休養と薬なのです。  
  うつ病の薬は、うつに対抗するという意味で抗うつ薬と呼ばれます。実際のうつ病では、抗うつ薬とともに、抗不安薬(いわゆるマイナートランキライザー)、さらに不眠があれば軽い睡眠薬などが併用される場合が多くみられます。軽症のうつ病では、抗不安薬と睡眠薬だけでも効果があります。抗うつ薬は、抗不安薬や睡眠薬と違い、服用してすぐには効果が出ません。効き始めるまでに2−4週間程度かかります。また、回復して症状が落ち着いてからも、再発を防ぐために半年から1年程度は服用継続が勧められます。主治医とよく相談することが肝心です。  
  こころの問題で薬をのむのは、少しも恥ずかしいことではありません。山が目の前に立ちはだかっているとき、登るためには誰しも革靴からスニーカーに履き替えるでしょう。薬はスニーカーのようなものなのです。