メンタル・ヘルス研究所日本生産性本部

メンタルヘルスQ&A

質問

 この3年間ほど、会社にほとんど来ない社員がいます。当社では1年半以上休職すると自然退職になる規定になっています。この社員は、自然退職の期限の直前に復職可能の診断書を提出して、職場復帰しますが、再度休職することを繰り返しています。どの様に対応すれば良いでしょうか。

回答(産業医科大学 産業医実務研修センター 森本 英樹)

  職場復帰(以下復職)の中でも、困難な事例です。前号では、復職の基本的なフローを解説しましたので、今回は運用と規定の詳細について説明します。
  復職制度というのは、今まで、職務を全うしてきた従業員が私傷病に陥った際に、解雇まで一定の猶予期間を付与することで、復職を達成する機会を与えるというものです。つまり病気休職は、復職を前提にした期間です。しかしながら、残念なことにこの制度を悪用する事例や、多少無理にでも復職して退職を防ごうとする事例もあります。
  例外的な運用はありえますが、基本的には(1)復職規定(就業規則等)の枠組みを確実に作成する、(2)規定の範囲内で運用する、(3)管理監督者に対し十分に教育を行う、(4)対応がケースによって大きくぶれないこと、が重要になります。その際、規定面と運用面では、数点注意すべきことがあります。
  規定の作成上については、以下の三点です。
1.前号の解説通り、復職には、主治医の診断書だけではなく、産業医の意見が必要です。大半の事例では、主治医と産業医との意見は一致しますが、時に判断が分かれることがあります。主治医の復職可の診断書に疑問がある場合でも、産業医が医学的な判断に加え、従業員の業務内容や社内規定を考慮した対応をとることができます。
2.就業規則の休職の規定を確認ください。休職事由に「傷病により職務に堪えないとき」との規定はありますか?また、復職後、同様の症状・疾病で再度欠勤する場合に前休職期間を通算する規定が含まれていますか?この規定が無いと、休みを繰り返す従業員に対して、休職命令を発令出来ない可能性や、数日間の復職後に再度長期間の病気休職を取る事例が発生する可能性があります。なお、精神科的な疾病には、同様の症状でも様々な病名が付くことがあります。そのため、診断書では異なる病名を提示することで、休職日数がリセットされ、自然退職を逃れる事例を作らないことも必要です。同一疾病かどうかの判断や、疾病を隠れ蓑とした怠慢、怠慢に見えやすい疾病の判断は、産業医の関与が必要です。
3.就業規則に「会社は必要があると認めた場合、会社の指定する医師に受診を指示することが出来る」という規定がありますか?職務能力が十分に回復していない状態が疑われる場合、合理性・相当性が認められる限り、就業規則等で受診義務に関する規定を根拠として、会社は従業員に受診を命じることが出来ます。
  次に、運用上の注意点としては、四点あります。
1.本人の欠勤・休職理由は、私傷病で間違いありませんか?業務上疾病の場合、休業している期間とその後30日間は解雇できません。業務上疾病かどうかの判断に迷うときは労働基準監督署に判断をゆだねましょう。
2.休職中の給料・休職できる期間について、従業員が休職を申請した際に説明していますか?期間の説明がなく、従業員が将来の生活が危ぶまれていると感じる中では、良い療養にはなりません。また、期限を設定することで復職へのタイムスケジュールを自身で作成することも出来ます。金銭面では、会社からの給料だけではなく、健康保険組合の給付も含め説明して下さい。
3.療養中、従業員に定期的な連絡をさせていますか?病気休職中、従業員は療養をする義務を負っています。報告の義務付けにより、従業員の怠慢による休業を防ぐことにつながります。
4.休職前の業務に復帰できない場合、会社の他の業務にも従事できるようになっていますか?復職は、元の職務に復帰するのが原則ですが、他の業務に配置転換することで、復職が可能となるケースがありますので考慮して下さい。
  これらの規定は、健康面に問題のある従業員を排除する規定ではなく、休業が必要な従業員をより良くサポートするための規定です。貴社をどのような会社にしたいか検討しながら、規定を見直して下さい。