メンタル・ヘルス研究所日本生産性本部

メンタルヘルスQ&A

質問

 過重労働対策で産業医面談を受けた従業員の中から、精神科受診が必要なケースが発生しました。同様なケースを確実に把握し、予防するためにはどのような対応をすればよいでしょうか。

回答(産業医科大学 産業医実務研修センター 黒木 直美)

 過重労働対策をメンタルヘルスの視点から見た場合、メンタル疾患の早期発見と予防のためには3つのポイントが挙げられます。

@労働時間の把握
 過重労働とメンタル疾患の関係では、精神障害による自殺の労災認定事案の分析結果では半数以上に月100時間以上の時間外労働時間が認められたことが報告されています。これまでに長時間労働により睡眠時間が短縮することが明らかとなっており、睡眠時間の短縮が脳の疲労回復を妨げ、脳の機能低下から抑うつ状態に至ると考えられています。
 一方では、抑うつ状態のようなメンタルヘルス不調から作業能率の低下や集中力低下を来たし、労働時間の延長を招くという事態も考えられます。したがって、メンタルヘルスの視点から見ても、労働時間の把握は重要なポイントであり、通常の時間管理を受けない管理監督者や裁量労働適用者等も含めて、本人による記録、コンピューターのログ、セキュリティドアの入退室時間など、労働時間の把握のための工夫が必要になります。

A面談対象者の選定基準
 法律、ガイドラインには「本人の希望」という条件がありますが、多忙さや重度の疲労により労働者本人からは希望を出せないこともあります。そのため、一定時間以上の時間外労働者には疲労蓄積度チェックリスト( 中央労働災害防止協会HP、http://www.jisha.or.jp)などを用いて積極的に情報収集を行い、本人の希望が無くとも面談の呼びかけを行える仕組みを持つことが有用です。

B職場の労働時間適正化
 過重労働対策をメンタル疾患予防の方策の一つとすることを視野に入れるのであれば、職場全体の労働時間を適正化することを考えなければなりません。そのために、把握された労働時間の集計値を安全衛生委員会などの場へ提出して、具体的な労働時間削減対策を議論することも有用でしょう。また、産業医面接後の意見書では、人員配置も含めた組織的対応が必要な場合もあるため、対象職場だけでなく人事部門等も関与するような連携体制を整えましょう。

 このような過重労働対策のおける面接指導体制や問診表の具体例は過重労働対策ナビHP(http://www.oshdb.jp/index.php)に紹介されていますので、ご参照ください。

  最後に、メンタル疾患に関係する職場の要因はご存知のように労働時間のみではありません。仕事の内容(納期切迫、クレーム対応等)、責任の変化、裁量性、職場の人間関係(上司・同僚)、報酬なども挙げられます。過重労働対策がきっかけで発見されたケースであっても、労働時間以外の職場の要因について確認することを忘れないようにしましょう。