メンタル・ヘルス研究所日本生産性本部

メンタルヘルスQ&A

質問

 メンタルヘルス対策についての社内での体制作りや実際の対応については理解できたのですが、最近はメンタルヘルス対策をサポートしてくれるEAP(Employee Assistant Program(いわゆる従業員支援サービス機関))と呼ばれる機関があると聞きました。実際にそれらのサービスを依頼する場合にどのようなことに留意したらよいでしょうか。

回答(産業医科大学 産業医実務研修センター 黒木 弘明)

 最近増加しているEAPサービスを行う業者(以下、EAPサービス業者)の選定と購入の際には、業者の言うなりにサービスを委託するのではなく、依頼する側が方針を明確に決める必要があります。具体的には以下のステップを踏むことをお勧めします。

@実施するメンタルヘルス対策の決定
 会社がどのようなメンタルヘルス対策を実施するのかを決定するとき、それは、まずメンタルヘルス対策を行う目的を明確にすることから始まります。例えば、新規のメンタル疾患による休職者数を減らしたい、予防的対策に重点を置きたい、問題を抱える個々のケース対応の円滑化を重要視したい等、それぞれの会社が抱える問題にあわせて実施するメンタルヘルス対策を設定する必要があります。その際には、人事担当者に加えてメンタルヘルス対策を実施する社内の産業保健スタッフの参画も重要になります。また、最近ではメンタルヘルス体制の構築のコンサルタントなどもありますので、活用されることもよいでしょう。

A社内資源の調査と体制づくり
 実施するメンタルヘルス対策の決定後は、その対策のどの範囲までを、社内資源で実施するかを検討します。現有する社内資源スタッフの機能で行う場合や、新たにスタッフを社内に迎える等の調査、検討を行います。

B委託するサービスの内容
 実施するメンタルヘルス対策と社内資源スタッフの担当範囲が決められた後、EAPサービス業者に委託するサービス内容を検討します。この時に社内資源スタッフとの連携を前提にすることで、購入後のEAPサービス導入の円滑化が望めます。

C期待するサービスの質に関する調査
 メンタルヘルス対策の全体像と、社内外資源の機能や担当範囲を調査、決定した上で、EAPサービス業者の選定に入ります。候補に挙がったサービス業者について、サービスの質や従業員の個人情報の取り扱いについての調査をすることは重要です。選定作業の際には、社内資源スタッフや前述のコンサルタントなどに意見を参考にしてもよいでしょう。

D契約
 EAPサービス業者の選定後の契約時には、一定の割合の従業員がサービス利用することを前提に費用算定が行われていますので、利用率の向上なども契約内容の一部として明確にしておくことも大切です。

E評価と契約の見直し(そして再び@へ)
 実際にEAPサービスを購入し導入した後には、そのサービスが本当に会社の求める機能を果たしているかを評価する必要があります。前述の利用率や、会社のメンタルヘルス対策に合致した効果が現れているか、社員の満足度はどうか、などの判定を行います。会社の責任として実施するメンタルヘルス対策ですから、評価の結果によっては、サービスの継続および変更を主体的に検討していくことが大切です。そして、必要に応じて@に戻ります。

  このようにサービスの購入の際には、上記のステップの着実な履行が必要ですが、EAPサービスが先進的に発展しているアメリカやカナダにおいては、各EAPサービス業者に対する『質の認証』が専門家によってなされています。そのことで利用者は望むサービスを提供する業者をより選びやすくなります。日本でも近い将来こうしたEAPサービス業者に対しての『質の認証』を行うようになることが期待されます。