メンタル・ヘルス研究所日本生産性本部

苦手の場面をどう乗り切るか

(生産性新聞2005年1月25日号)

職場不適応の一つのタイプとして、「恐怖性障害」あるいはパニック発作というのがある。―会社でも官庁でも、苦手の上役の前に出ただけで、いても立ってもいられなくなる。その場から逃げたくなる。あるいは会議で提案をする。商品やプランの説明をする。よくあることとして、昇進して「上司」になり、部下を集めて訓示をする。そういう場面がくると動悸がする。顔がこわばる。吐き気がする―という反応が起きて、その場にいたたまれなくなったり、発作が時には起きたりする。職場に鬱病と自殺が増えている今日、会社員で、それまで真面目で、成績もよかった人が、何かのきっかけでそういう発作に見舞われる。

何かそういう場面で失敗したことが心の傷になって、またあれが起きるのではないかという不安に取りつかれこともある。「鬱病は心の風邪のようなもので必ず回復する。恐れることはない」と大抵の入門書には書いてあり、薬物療法が行われて、それでいったん軽快して、出勤したいと本人も言い、勤務可能の診断書を書いて、出勤するという日になって、こういうパニック発作が起きて、どうしても出勤できない。鬱は治る病気だというのに遷延する。休んだり出たりを繰り返すというので、鬱病になった従業員一般に対する会社や官庁での信用がなくなる。

必ずしも鬱病自体は重症でなく、「抑鬱や不安を伴う適応障害」という程度の場合でも、職場復帰が長引いてしまう。こういう場合、職場での苦手場面を乗り切るにはどうしたらいいであろうか。職場でのそういう事例に馴れている精神科医やカウンセラーが使う方法は、「イメージ訓練を伴う、リラグゼーション法」というものである。

(1)まず机の上に花を差した花瓶を置いて、それを5分間凝視させ、それから白紙の壁に花瓶を思い浮かべさせる。場合によりこれを反復する。

(2)ついで、職場で苦手な場面、パニックを起こした状況を目を閉じて、まざまざと思い浮かべる。こうすることで大抵、1分間の脈拍数が著しく増加する。

(3)そこで目を閉じて、「一つ、一つ」と唱えさせ、ついで「鼻から息を吸って、空気の動きを感じながら深く吸い込み、空気の動きを感じながら口から送り出すように吐く」ということを反復させる。

(4)普通の呼吸に戻ったら、心の中で「気持ちがとても落ち着いている」と反復させる。それで落ち着かないなら、(3)の呼吸法からやり直す。この場合、脈拍の増加と減少は比較的覿面(てきめん)に起きて、1分間60位に戻るのが普通である。実際には、この練習を1日2〜3回反復し、苦手場面に赴く前に、抗不安薬を1錠、頓服してこれを行うのもいい。

こうして不安を乗り切れる(コーピングできる)方法があることを知るだけで、パニックに対処する自信ができる。産業精神科医やカウンセラーにはこういう具体的で、行動的な技術を身につけた人を捜すといいのである。