メンタル・ヘルス研究所日本生産性本部

「成果別賃金制度」と心の活性化

(生産性新聞2003年11月15日号)

日本郵政公社は全国12万人のアルバイト職員を仕事の習熟度別に3つのランクに分け、給与に差をつける方針を決めた。日本マクドナルドがアルバイト店員の意識向上に役立てている手法を導入したものだ。アルバイトはいったん仕事の面白さを覚えると、上位ランクをめざすなど次の目標を常にもち、見違えるように熱心になるという。この方法が成功しそうだと予想されるのは、アルバイトの仕事にも目標とやり甲斐を与えられそうだからだ。成果別賃金制度は従業員にやり甲斐と目標を与えるためにデザインされていなければならない。

郵政公社の場合、アルバイト職員の給与は現状よりもわずかに増える計算だ。新賃金制度に人件費抑制や、「ついて来られない者の淘汰」という別の目標が含まれていたのでは、職場の活性化につながらないだろう。それに、この方法は職場の直属上司の権限と裁量権を大きく認めている。日本と米国の職場の大きな違いは、米国の職場の「ボス」の権限が大きいことだ。職場リーダーの権限が余りに小さい日本の職場では、グループ全体の活気を高めようとしてもリーダーにできることに限りがあった。それが改められる契機になる。その代わり、このやり方では職場のメンバーの創造性を引き出し、グループとしての創造性につなぐためのリーダーシップのあり方が常に問われることになる。成功したリーダーシップのあり方を検討してみると、次のように言える。

@前向き・楽観性・お祭り気分=成功したリーダーに共通するのは西堀栄三郎氏の「石橋を叩いたら、渡れない」、さらに松下幸之助氏の「やってみなはれ」に象徴されるような前向きな姿勢だ。最近の部下たちが上司に期待するのは興奮(エキサイトメント)・享受(エンジョイメント)・演出(エンタテインメント)の3つのEだといわれ、職場を何と思っているのだと年長者は嘆く。西堀氏や松下氏、本田宗一郎氏、井深大氏といったリーダーたちが率いていたころの企業や研究室は「前向きのお祭り気分」で満たされていた、と人びとは回想する。

A秘密・面倒見・感受性・聴き入る心=これは「カウンセリング・マインド」と呼ばれるものだ。上司はカウンセラーではないし、職場の目的は生産性と効率である。しかし、「成果別賃金」を導入する場合、楽伍しがちな人を落ちこませないで、すくい上げる安全網は必要であり、それが上司の「カウンセリング・マインド」である。部下に人間的関心をもち、面倒を見てやり、なによりもその言い分に耳を傾けて「聴いてやる」ことが必要なのである。職場に出て来られる程度の健康状態が保たれていれば、その不安や不満を察してやる程度の感受性をもち、個人的に打ち明けられたことの秘密を守り、相槌を打ってやる程度のことで、かなり多くの従業員は具体的に待遇の問題が解決してなくても納得して、自分で心理的解決法を見出す。

この@、Aが保たれていれば、「成果別評価」の導入も心の活性化につながることになるだろう。