メンタル・ヘルス研究所日本生産性本部

「職場の自殺ゼロ」を達成するために

(生産性新聞2004年9月5日号)

2004年度の自殺者数は、7年連続で3万人を超え、3万4429人となり、統計を取り始めた1978年以降最も多かった。さらに自殺を図ったものの幸い命を助けられた人、自殺未遂者の数は少なく見積もっても、既遂者の10倍になるとされている。また、自殺や自殺未遂者と強いつながりのあった人で、事件によって精神的打撃を受ける人は自殺行動1件あたり最低5人はいるという報告もある。それが企業や職場にとっても重大な関係があるのは、遺書から警察が推定した自殺原因の中で、近年、激増しているのが「社会経済的原因」であり、「職場での問題」が特に増えているからでもある。

一方、過労死自殺や、職場でのパワー・ハラスメントなど人事労務管理の不適切に起因して鬱病が引き起こされた結果、自殺に至った事例についても、近年は労災認定だけでなく、雇用主の安全管理不適切を理由とする民事上の賠償請求が認められる傾向にあるからである。

内閣府の経済社会総合研究所は、社会・精神の病理としての自殺の原因究明と対策のための調査を開始する。自殺者が出た場合、その原因をさかのぼって究明することを心理学的検死という。

自殺者が出た場合、職場はこれを行って、今後、自殺が再発することを防ぐ必要がある。どうしてこの自殺が防げなかったか、節目、節目の検討は可能であり、それが行われれば、自殺は随分、防げるのである。すべての自殺行動が予防できなくても、少なくとも一定の対策が立てられていればゼロにできるタイプの自殺がある。

@社会経済的理由による自殺の中でも、「負債による自殺」は最も理由があるようで、しかし防ぐことができる自殺である。ボーナス減や賃金カットで、住宅ローンが払えなくなり、ついにサラ金に頼り、残酷な取り立てに合うというのが典型である。自殺する債務者には、利息制限法、簡易裁判所での民事調停、自己破産手続の存在さえ知らない者が多い。債権者は職場に押しかけると債務者を嚇(おど)すことが多く、それが自殺の引き金になる。こういう制度があることを広報し、窮地に陥った場合の生活相談の対応者を決め、それを周知させることで悲劇が防げる。

A何といっても自殺の最大の理由は「病苦」である。心身の病気を抱えている場合、医師の対応だけでは不安が除けない。嘱託産業医、保健師、看護師は医療カウンセラーの役割を勤めるべきである。病苦を抱えている事例には「御用聞き」時に接近して悩みを聞くといい。

B鬱病の早期発見と社会復帰ほど重要なものはない。初期と治りかけに自殺の危険が最も高いからだ。社内報に自己診断用チェックリストを刷り込んで受診をすすめること。管理職研修で鬱病の発見法を講習すること。鬱で休んだ場合、職場復帰のプログラムを産業医、人事担当者、上司、保健師、カウンセラーで合議するが、そのプログラムを外部の専門機関に作成してもらうことである。