メンタル・ヘルス研究所日本生産性本部

30歳代社員に元気を

(生産性新聞2004年10月5日号)

社会経済的事由による自殺の増加については、従来、主として40-50歳代の問題であると考えられてきた。しかし、日本生産性本部メンタル・ヘルス研究所が上場企業の労務担当者に対して行ったアンケート調査の結果では、「『心の病』はどの年齢層で最も多いか」という質問には、人事・労務担当者の49.3%が30代と答え、次いで40代(22.0%)となっている。

もちろん、雇用削減の影響で50代が職場から姿を消し、職場の年齢構成が変化したということもあるかもしれない。しかし、同研究所の今井保次研究主幹らのJMI調査を用いた210万人を対象とする研究は、むしろ中高年ではなく、若い層に不安定さが出ており、30代のデータが、40-50代や20代に比較して健康度の落ち込みを見せている。将来に希望が持てなくなっており、仕事の負担感が増し、活動的でなくなり、粘りに欠けるようになっている。「将来への希望」は30代ばかりでなく、全体に希望をなくしている方にシフトしているが、30代の変化が相対的に大きい。

最近の職場は働きにくさが増しており、全員が影響を受けて適応度を落としているが、30代が特に顕著である。しかし動態を見ると30代がもともと落ち込んでいたのではなく、これは現在の30代世代の特徴といえよう。彼らはバブル期採用の世代に当たる。適性や能力を十分に考慮することなく採用され、採用後も教育不十分で能力向上の機会に恵まれないまま、現在のリストラ時代の困難な仕事をこなさなければならなくなった世代である。過労自殺(未遂を含む)の労災認定件数のうち、30代が多くなっている。30代の労働環境は明らかに困難なようである。

今日、長い不況の後に景気回復の兆しが見えてきたところであり、それは繁忙化による日常ストレスの増加、特にその30代への集中が予想される。従って必要なのは、

@日常の繁忙ストレスによる燃えつきを防止するための労働時間の適正化、休養の確保、休憩時間を利用したリラクゼーション、自律訓練法などの導入。

Aうつ病の早期発見、早期治療、社内報へのうつ病、ストレスチェックリストの刷り込み、社内外の相談機関の存在の広報、JMIシステムの導入などの一般的対応。

B特に30代の社員のための仕事面での悩みの相談のための職業カウンセリングの施行、キャリアに関する悩みへの対応。

C特に20代を通じて、危機感と不安感を刷り込まれた30代に対して、企業への帰属意識を高めるために、いい意味での日本的企業風土の回復、とりわけ一人ひとりの従業員に人間的関心を持ち、企業・経営者・管理者に同一化してもらうことは、社員と企業との関係の安定性を保ち、モラールを維持するためにも必要である。従業員に「企業から見捨てられた」という意識を持たせることは特に有害であると知るべきだろう。