メンタル・ヘルス研究所日本生産性本部

「過密スケジュール」と心のテューンナップ

(生産性新聞2004年11月5日号)

景気が浮揚してきた。というので、職場の繁忙度が増してきたという企業は多いだろう。一方では、これから債務の整理に入る、雇用削減が行われるという大企業もある。どちらの場合でも、「疲れた」という言葉が人々の口から出る。それでなくても、秋は「夏の疲れ」が出る、あるいは日照時間が短縮するということで、心身の調子に落ち込みが生じやすい。これを「季節うつ病」と言うのだが、うつ病とまでいかなくても、秋風が立つとともに、疲れ切っているという感じを多くの人が持つ。「平成不況疲れ」とも言えるような心理を持っている産業人は少なくない。

そんな場合、当人にして見れば、別に一日十五時間、働いているわけでもないのにいつも疲れ切っている。物事に対して、他の人よりもやたらに多くのエネルギーと時間を費やしているような気がして、そのうちベッドから起き上がれなくなるような気がすることさえある。どうしてこんな事になるのだろうか。専念すべき仕事ややり甲斐のある仕事がないために心が乱れ、精根尽き果てる。熱狂し興奮することがあれば心のスタミナは回復するが、情熱を傾けるものがない時にはエネルギーはただ消耗してゆく。心が何かに集中していたなら、消耗したエネルギーは補充されるが、補充されないと心が乾いてしまう。

プラス思考は正のエネルギーを生み出し精神を高揚させるが、マイナス思考は負のエネルギーを生み出し疲労を誘う。 やり甲斐のある対象がないと心の中をマイナス思考が闊歩するようになる。マイナス感情にとらわれているとエネルギーがどんどん消費される。こんな時に、はけ口がないと鬱状態に陥りやすくなる。理性的に考え、行動するのに必要なエネルギーが枯渇する。世間に対して外見を取り繕う一方で、すべてのエネルギーを注ぎ込んで、マイナス面を押さえ込もうとするからである。進行中のことが余りにも多過ぎて、「過密スケジュール」であるかのように感じることがよくある。

しかし、これが心配事や不安のタネで埋まった幻のスケジュールで、無為に過ぎた空白部分を埋めようと心がはやるのである。こういう場合、つまらないことにとらわれる傾向がある。取るに足らないことが拡大して空白を深めるのである。社員がこんな状態に陥るのは、トップが社員に胸がわくわくするような目標を与えていないのである。社員にわくわくするような目標を与えることこそが、従業員の精神保健とモラールを向上させるためのリーダーの責任なのである。

一方、従業員の方から見たらどうであろう。人が一番休養を必要とする時は、仕事にあまり熱心でない時が多い。しかし、仕事に身が入っていない時には休みを取ってはいけないように思ってしまう。そんな考えは間違いである。そんな時には毎日の仕事から、二日か三日遠ざかってみるとよい。それだけで、心のテューンナップに役立つ。それでやる気が出て、物の見方もフレッシュになり、仕事に専念できることも多いのである。